【初心者向け】フィルム風写真に仕上げる!色と質感の編集ステップ
写真編集を始めたばかりで、どんな編集をすれば自分の写真に個性を出せるのか、あるいは「なりたい雰囲気」に近づけられるのか、悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。特にPC版の編集ソフトは多機能で、どこから手をつければ良いか分からなくなることもあります。
この記事では、写真に独特の温かみやレトロな雰囲気を加えられる「フィルム風」の編集に焦点を当て、その特徴と初心者でも取り組みやすい基本的な編集ステップをご紹介します。単に操作方法を説明するだけでなく、なぜそのような調整をするのか、その意図も解説しますので、今後の編集ワークフロー構築のヒントにしていただければ幸いです。
フィルム風写真とは?その特徴を捉える
デジタルカメラで撮った写真と、昔ながらのフィルムカメラで撮った写真には、いくつか違いがあります。フィルム風の編集とは、これらのフィルム特有の特徴をデジタル写真で再現しようとするものです。具体的には、以下のような特徴が挙げられます。
- 独特の色合い: 特定の色(例えば緑や青)がデジタルとは異なる表現になったり、全体的にわずかにくすんだり、色味が偏ったりすることがあります。
- 階調の柔らかさ: 特に暗い部分(シャドウ)が完全に真っ黒にならず、わずかに明るさが残る「フェード感」があることがあります。コントラストがデジタルほど強くない場合もあります。
- 粒状感(グレイン): フィルムには「粒子」があり、拡大するとザラザラとした質感が見られます。これが独特の雰囲気や暖かみを感じさせることがあります。
- ハイライトの粘り: 明るい部分(ハイライト)が白飛びしにくく、階調が豊かに残る傾向があります。
これらの特徴を理解することが、フィルム風編集の第一歩です。完璧な再現を目指すのではなく、「どんな雰囲気にしたいか」を考えながら編集を進めるのがおすすめです。
初心者向け!フィルム風編集の基本的なステップ
PC版の写真編集ソフト(LightroomやPhotoshop、その他の現像ソフトなど)を使って、上記のフィルムらしい特徴を写真に加えてみましょう。ここでは一般的な調整項目を使ったステップをご紹介します。
ステップ1:基本調整で写真のベースを整える
まずは写真全体の明るさやコントラストを調整し、編集しやすいベースを作ります。
- 露出(明るさ): 写真が暗すぎたり明るすぎたりする場合は、適正な明るさに調整します。
- ハイライトとシャドウ: 明るすぎる部分を落ち着かせ(ハイライトを下げる)、暗すぎる部分を持ち上げて(シャドウを上げる)、写真全体の情報を見やすくします。フィルム風では、特にシャドウを少し持ち上げることで、独特のフェード感を出す準備ができます。
- 白レベルと黒レベル: 写真の一番明るい部分(白)と一番暗い部分(黒)の基準を設定します。コントラストを調整する際にも影響します。
ステップ2:色合いの調整でフィルムらしい色味を加える
フィルム風の特徴の中でも特に重要なのが、色合いの表現です。
- ホワイトバランス: 写真全体の「色かぶり」(青っぽい、黄色っぽいなど)を補正します。フィルムの種類によっては特定の環境で色かぶりを起こしやすいものもあるため、あえて完璧に補正せず、わずかに暖色や寒色に傾けることで雰囲気を出すこともあります。
- HSL(色相・彩度・輝度)調整: 写真に含まれる特定の色(例えば緑の葉、青い空、人物の肌色など)だけの色味、鮮やかさ、明るさを個別に調整できます。フィルムによっては緑がかったシャドウや、特定の色が独特の発色をすることがあります。HSLツールでこれらの色の表現を調整することで、フィルムらしい色合いに近づけられます。
- ワンポイント解説: HSLは、Hue(色相=赤、青、緑などの色の種類)、Saturation(彩度=色の鮮やかさ)、Luminance(輝度=色の明るさ)の頭文字です。例えば、「緑の色相を黄色寄りに」「青の彩度を下げる」「人物の肌色(オレンジや赤に含まれることが多い)の輝度を上げる」といった調整ができます。
- カラースプリットトーン(分割調色): 写真の明るい部分(ハイライト)と暗い部分(シャドウ)に、それぞれ異なる色味を加える機能です。例えば、ハイライトに暖色系、シャドウに寒色系を加えることで、フィルム写真でよく見られる色の分離感を再現できます。これは非常に効果的なツールですが、やりすぎると不自然になるため、少しずつ調整するのがコツです。
ステップ3:トーンカーブでコントラストとフェード感を調整する
トーンカーブは、写真の明るさやコントラスト、色合いを細かく調整できる強力なツールです。最初は難しく感じるかもしれませんが、フィルム風編集では特にシャドウのフェード感を出すのに役立ちます。
グラフ上の線を操作することで、写真の特定の部分(暗い部分、中間部分、明るい部分など)の明るさを上げたり下げたりできます。シャドウを持ち上げるには、グラフの左下部分にある線を少し上に動かします。これにより、写真の一番暗い部分が完全に黒ではなくなり、ふわっとしたフェード感が生まれます。最初はグラフの端点を少しだけ動かすことから試してみてください。
- ワンポイント解説: トーンカーブのグラフは、一般的に左下が暗い部分、右上が明るい部分を表します。線を上に動かすとその部分が明るく、下に動かすと暗くなります。
ステップ4:質感の調整でフィルムらしさを加える
デジタル写真にフィルムらしい質感を加えることで、より本格的な雰囲気を出すことができます。
- 粒子(グレイン): 編集ソフトには、意図的に写真にザラザラとしたノイズのような「粒子」を加える機能があります。これがフィルム特有の粒状感を再現するのに効果的です。粒子の量やサイズを調整できるので、写真の雰囲気に合わせて自然に見えるように調整しましょう。
- シャープネス: 写真の輪郭を強調し、クリアに見せる機能です。フィルム風では、デジタル写真ほどシャープネスを強くかけない方が、柔らかい雰囲気が出る場合があります。
ワークフロー構築のヒント:試しながら自分らしいフィルム風を見つける
これらの編集ステップは、必ずしもこの順序でなければならないわけではありません。また、「これが正解」というフィルム風の色味や質感があるわけではなく、目指す雰囲気によって調整の仕方は変わります。
大切なのは、これらのツールがどのような効果を持つのかを理解し、自分の写真を見ながら「もう少しシャドウを柔らかくしたいからトーンカーブを触ってみよう」「この緑の色味が気になるからHSLで調整しよう」のように、意図を持って編集を進めることです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、いくつかの写真を対象に、今回ご紹介したステップを順番に試してみてください。そして、「シャドウを持ち上げると写真がどう変わるか」「カラースプリットトーンで色を加えるとどんな雰囲気なるか」などを観察してみましょう。
いくつかのパターンを試してみて、「この調整の組み合わせが好きだな」と感じるものがあれば、それを「プリセット」として保存するのも良いでしょう。次回以降、同じような雰囲気の写真にはそのプリセットを適用し、さらに微調整を加えるというワークフローを構築すれば、編集時間の短縮にもつながります。
まとめ
今回は、写真編集初心者の方に向けて、フィルム風写真の特徴と、それを実現するための基本的な編集ステップをご紹介しました。
- フィルム風の特徴は、独特の色合い、階調の柔らかさ(フェード感)、粒状感など。
- 編集のステップとして、基本調整、色合い調整(HSL、カラースプリットトーン)、トーンカーブ、質感調整(粒子)が有効です。
- それぞれのツールが写真にどのような効果をもたらすかを理解し、試行錯誤しながら自分らしいフィルム風の表現を見つけることが大切です。
PC版の編集ソフトは機能が多いですが、一つずつその役割を理解していけば、必ず使いこなせるようになります。まずは今回ご紹介したフィルム風編集を参考に、基本的なツールを使った写真の雰囲気作りに挑戦してみてください。あなたの写真に新たな個性が加わることを願っています。