【PC初心者向け】写真編集ソフトを開いたら?最初の調整ステップ解説
PCで写真編集を始めようと思ったものの、「ソフトを開いて、まず何をすればいいの?」と戸惑ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。モバイルアプリでの編集経験はあるけれど、PCソフトの複雑な画面を見ると、どこから手を付けて良いか分からなくなる、というお声もよく聞きます。
この記事では、そのようなPC写真編集の初心者の方に向けて、ソフトを開いてから最初に行うべき基本的な調整ステップと、なぜその作業を最初に行うのかという理由、そして編集の基本的な考え方について解説します。この最初のステップを理解することで、その後の編集作業がスムーズになり、自分らしい表現を見つけるための土台を築くことができます。
なぜ「最初のステップ」が重要なのか
写真編集は、完成を目指して様々な調整を積み重ねていく作業です。しかし、どの調整をどの順番で行うかによって、効率や最終的な仕上がりが大きく変わってきます。特にPC編集ソフトは多くの機能を備えているため、闇雲に手をつけてしまうと、時間がかかるだけでなく、意図しない仕上がりになってしまったり、やり直しに手間取ったりすることがあります。
最初に写真全体の基本的なトーンや色味を整えることで、その後の部分的な調整や細かい色の作り込みが容易になります。言わば、写真というキャンバスの地ならしをするようなものです。
それでは、具体的な最初のステップを見ていきましょう。
ステップ1:RAWデータとJPEGデータの違いを理解する
PCでの写真編集を始めるにあたり、まず知っておきたいのが「RAW(ロー)」と「JPEG(ジェイペグ)」という写真データ形式の違いです。多くのカメラでは、どちらか、あるいは両方の形式で写真を記録できます。
- JPEG: カメラが撮影時に現像(画像処理)を自動で行い、圧縮して保存したデータです。容量が小さく、汎用性が高い形式ですが、編集の際に調整できる範囲が限られます。色の階調などが失われやすいため、大胆な編集には向きません。
- RAW: カメラがセンサーで捉えた情報を、現像前の「生(なま)」の状態で記録したデータです。容量は大きいですが、色の情報や明るさの幅(ダイナミックレンジ)が豊富に残されています。そのため、編集の自由度が高く、明るすぎたり暗すぎたりする部分の調整や、色の調整を破綻させにくいという大きなメリットがあります。
個性を活かした柔軟な編集を行うためには、RAWデータでの撮影と編集が強く推奨されます。もしカメラの設定がJPEGになっている場合は、RAW、またはRAW+JPEGでの記録に変更を検討してみてください。PC編集ソフトの多くは、このRAWデータを扱うことに長けています。
ステップ2:写真を取り込み、全体像を把握する
使用する編集ソフト(例:Adobe Lightroom Classic, Capture Oneなど)に写真をインポート(取り込み)します。このとき、可能であれば写真を一覧で表示し、今回編集する写真全体の傾向や、特に調整が必要そうな写真がないかなどをざっと見ておくと良いでしょう。
写真によっては、構図を少し変えたい、傾きを直したいといった要望もあるかもしれません。これらの調整は、後の色や明るさの調整に影響を与えない場合が多いため、この段階、あるいは最初の全体調整が終わった後に行うのが一般的です。
ステップ3:写真全体の明るさ・コントラストを調整する(露光量、ハイライト、シャドウなど)
写真編集の最初の山場です。ここでは、写真全体の明るさや、明るい部分と暗い部分の差(コントラスト)を調整し、写真の土台となるトーンを整えます。
- 露光量(Exposure): 写真全体の明るさを大きく調整します。暗すぎる写真は明るく、明るすぎる写真は暗くします。最初に写真全体の適正な明るさの基準を決めます。
- ハイライト(Highlights): 写真の中で特に明るい部分(例:空の明るい部分、反射光など)の明るさを調整します。明るすぎると白飛び(色が完全に失われる状態)してしまうため、白飛びしそうな箇所を抑えたり、逆に明るさを強調したりします。
- シャドウ(Shadows): 写真の中で特に暗い部分(例:建物の影、暗い森の中など)の明るさを調整します。暗すぎる部分は情報が失われ(黒つぶれ)、何が写っているか分からなくなってしまうことがあるため、暗部を持ち上げて見えやすくしたり、逆に引き締めるために暗部をさらに暗くしたりします。
- 白レベル(Whites) / 黒レベル(Blacks): 写真の中で最も明るい点、最も暗い点を決め、写真全体の明るさやコントラストの幅(ダイナミックレンジ)を調整するのに使います。白レベルを上げることで写真全体に輝きが増したり、黒レベルを下げることで写真が引き締まったりします。
これらのスライダーを操作することで、写真が持つ本来の情報や階調を最大限に引き出すことを目指します。特にRAWデータであれば、白飛びや黒つぶれして見えていた部分にも情報が残っていることが多く、これらの調整で階調を復元できる場合があります。
この段階では、写真の持つ雰囲気を大きく変えるというよりは、写真全体をバランスの良い明るさにすることを意識してください。
ステテップ4:ホワイトバランスを調整する
ホワイトバランスとは、「写真において白を白く写すための調整」のことです。カメラは見たままの色を記録しますが、太陽光、曇りの日の光、電球の光など、光源によって「色温度」が異なります。この色温度の違いによって、写真は実際よりも青みがかって見えたり、黄色っぽく見えたりします。
ホワイトバランスを適切に調整することで、写真の色かぶりを補正し、肉眼で見たときに近い自然な色合いに戻すことができます。また、意図的にホワイトバランスをずらすことで、写真を温かい印象にしたり、クールな印象にしたりと、雰囲気を操作することも可能です。
編集ソフトには、「自動」や「スポイトツール」で写真の中の白い部分を指定して調整する機能があります。まずは自然な色合いになるように調整し、そこから自分の表現したい雰囲気に合わせて微調整していくのが良いでしょう。
ステップ5:基本的な色調整を行う(彩度、自然な彩度など)
写真全体の明るさとホワイトバランスが整ったら、次は基本的な色の濃さを調整します。
- 彩度(Saturation): 写真全体の色の鮮やかさを調整します。彩度を上げると色が鮮やかになり、下げるとくすんだ色、最終的にはモノクロに近づきます。
- 自然な彩度(Vibrance): 彩度と似ていますが、特に彩度の低い色や肌色への影響を抑えつつ、鮮やかさを増すように調整されます。彩度よりも自然な仕上がりになりやすい傾向があります。
これらの調整も、写真全体の印象を大きく左右します。色を鮮やかにしすぎると不自然に見えることもありますので、写真のテーマや表現したい雰囲気に合わせて慎重に調整することが大切です。
ステップ6:構図を調整する(トリミング、回転)
明るさや基本的な色味が整った段階で、改めて写真の構図を確認し、必要であればトリミングや回転を行います。
- トリミング(Cropping): 写真の不要な部分を切り落とし、構図を調整します。主題を際立たせたり、視線を誘導したりするために行います。
- 回転・傾き補正(Straighten): 写真が傾いている場合、水平や垂直が出るように回転させます。風景写真などで水平線や地平線が傾いている場合に重要です。
これらの調整は、その後の色や明るさの微調整、部分補正を行う前に済ませておくと、最終的なイメージを掴みやすくなります。
この後のステップ、そしてワークフローへ
ここまでご紹介したステップは、PCでの写真編集における「最初の、全体的な調整」の基本的な流れです。写真全体のトーンと色味の土台を作ることを目的としています。
この後には、さらに細かな色の作り込み(特定の色の調整)、部分的な明るさの補正(ブラシツールなど)、シャープネス(写真の輪郭をはっきりさせる)、ノイズ軽減(写真のザラつきを抑える)といった、より具体的な調整が待っています。
すべての写真をこの通りに編集する必要はありませんし、編集する写真や目指す仕上がりによって手順を入れ替えたり、省略したりすることもあります。しかし、「写真全体を整える」という基本的な考え方と、この記事で紹介したような項目から調整を始めるという流れは、多くの写真編集ソフトで共通する、効率的で効果的なワークフローの基礎となります。
まとめ:最初のステップをマスターし、自分らしい編集へ
PCでの写真編集は、最初は難しく感じるかもしれませんが、写真全体の明るさや色味を整える「最初のステップ」から順に進めていくことで、着実に上達できます。
今回ご紹介した、RAW/JPEGの理解、明るさ・コントラスト調整、ホワイトバランス調整、基本的な色調整、そして構図調整といった基本的な流れは、あなたの写真編集ワークフローを構築する上での大切な出発点となります。
これらの基本的な調整の意味と効果を理解し、様々な写真で実践していくことで、写真がどのように変化するのか、そしてどのような調整が自分の表現したいイメージに近いのかを掴むことができるようになります。
この最初のステップから、ぜひあなただけの編集ワークフローを見つけ、写真に個性を吹き込んでいってください。